血統調査員のYRAです。
「血統表は競走馬の設計図!」ということで。
今週から秋競馬スタート!
土日ともG1前哨戦が行われます。
土曜日に行われる紫苑ステークスについての血統傾向については先日こちらで述べました。
https://twitter.com/yra_uma/status/1435355838378430467
それでは、秋華賞トライアルの全頭血統考察スタートです!
【紫苑ステークス(GⅢ)】
1枠1番スルーセブンシーズ
父ドリームジャーニー 大野
母マイティースルーは現役時、4勝(芝1400m~1800m)。
半姉に紫苑S(G3)勝ちのパッシングスルー(父ルーラーシップ)がいる。
オークス時に「ドリームジャーニーはステイゴールド直仔で中山のような小回りコースが得意な傾向にある。東京変わりはプラスではない」と述べたように上位進出はなりませんでした。
上述したように半姉がここを勝っているし血統的にもここはバッチリ。
1枠2番トウシンモンブラン
父ルーラーシップ 三浦
母母トレンドハンターはフラワーC(G3・阪神芝1800m)勝ち馬で桜花賞3着に入着。
勝ち味に遅かった父ルーラーシップに母父エンパイアメーカーのアメリカ型スピードと日本の王道血統サンデーサイレンスを組み合わせた配合。
勝ち上がりまでに実に10戦を要したが、昇級直後で早速2着に入ると2戦目となる前走であっさりと1勝クラスを突破。
ルーラーシップ産駒は上昇期に入るとどんどん勝ち上がっていく。
その特徴通り、ここでも上位進出となるか。
2枠3番ミスフィガロ
父ディープインパクト 津村
母母ブロードアピールは芝・ダート短距離重賞を6勝。
父ディープインパクトに短距離のスピードを持つ母の組み合わせは典型的な成功パターンで、全兄ワグネリアンは日本ダービーを制した。
本馬は勝ち上がりまでに5戦を要してクラシックとは無縁になってしまったが、昇級初戦の前走をあっさりクリア。一気の相手強化となるここをクリアできればこの後がとても楽しみとなる。
2枠4番エクランドール
父ディープインパクト ルメール
本馬についてはデビュー前に血統注目馬として取り上げ、下記のように考察した↓
『母リュヌドールはフランス馬。現役時13戦4勝。
主な勝鞍は、リディアテシオ賞(芝10F・G1)
日本のジャパンカップにも参戦した経歴を持つ(7着)。
引退後繁殖にあがり、2010年に日本に輸入された。
繁殖として日本でのデビュー済み産駒はこれまで4頭。
父ハーツクライ(3勝)→父ディープインパクト(G1・3勝、フィエールマン)→父オルフェーヴル(2勝、現役)→父ジャスタウェイ(1勝、現役)
このようにデビューした産駒は全て勝ち上がっており、全兄は先日種牡馬入りしたあのフィエールマン。
血統背景は父Green Tune(~Nijinsky~ノーザンダンサー系)×母父Noir Et Or(~Princely Gift~ナスルーラ系)の組み合わせ。
Green Tuneは仏2000ギニーとイスパーン賞(共にフランスG1)の勝ち馬。
母父がヨーロッパのマイルG1馬で母はヨーロッパの中距離G1馬。
重厚なヨーロッパ血統に日本の素軽い血の代表格であるディープインパクトを配した形である。
それにより全兄は長距離適性を高く持つ長距離砲として完成したが、妹の本馬はどうか。』
↑デビュー戦を勝った後、間を空けて1勝クラスもクリア。
そこからさらに間隔を空けてここに持ってきました。
フィエールマンが晩成だったことから大切に育てられている印象で非常に好感が持てますね。
成長を促した分の効果がきちんと出ているか、パドックを見るのが楽しみな一頭です。
3枠5番キヨラ
父エピファネイア 内田博
母テンイムホウは現役時、42戦5勝(OP馬)。
父の成功配合パターンはサンデーサイレンスをクロスすること。
本馬は、サンデーのクロスがなく中央で勝ち上がることはできなかった。
サンデーが無く、Blushing Groomを持つのはイズジョーノキセキ(3勝・現役)と同じで、サンデーなし活躍馬はこれくらいしかいない。
本馬は中央で勝ち上がれなかった後、地方で実績を積み上げてここへ来たが、好走できる素地があるかというと・・・厳しいだろう。
3枠6番シャーレイポピー
父ミッキーアイル 鮫島駿
母母トールポピーはオークス・阪神JFとG1を2勝。
父ミッキーアイルはディープインパクトのマイラー担当種牡馬で、サンデーのクロスはメイケイエール(チューリップ賞(G2))を出すなど好相性。
メイケイエールのように気性がキツくなりがちだが、今のところ本馬はそこまでではない。
ミッキーアイルは自分を強く出しがちな種牡馬なので本馬も芝1600mがベスト。
4枠7番パープルレディー
父ディープインパクト 田辺
母メリッサは北九州記念(G3・芝1200m)の勝ち馬。
全兄にミッキーグローリー(関谷記念(G3)・京成杯オータムH(G3)共に芝1600m)とカツジ(ニュージーランドT(G2))がいる。
父ディープインパクトにはスピード血統を持ってくることが配合の鉄則なのでこの傾向に合致。
父ディープインパクト×母父ホワイトマズルの牝馬は京都大賞典(G2・芝2400m)を勝ったスマートレイアーが代表格で、本馬も距離適性はまさにこのような感じ。
オークス時に「どの馬にとってもこの時期のこの距離は苦しいものになりますが、そんな中で数少ない距離を苦にしなさそうなタイプ。ただし、現段階での能力的には疑問が残りますが・・・。」と述べたようにこの馬もオークス時点では世代上位に歯が立ちませんでした。
ひと夏越してどれだけ成長できているかがポイントでしょう。
4枠8番メイサウザンアワー
父ノヴェリスト 石橋脩
母母トゥザヴィクトリーはエリザベス女王杯(G1)勝ち馬で繁殖としてもトゥザグローリーやトゥザワールドといった重賞馬を輩出した。
そんなトゥザヴィクトリーの産駒として母ディナシーは6億3000万円で取引された。
そんな良血の母に重厚な欧州血統ノヴェリストを配されたのが本馬。
もちろんサンデーを取り入れるのはプラスで、中山も合う。
5月以来のレースとなるが、ノヴェリスト産駒は基本晩成傾向なので成長を促したこの夏に成長力が見られるようだと面白い。
5枠9番アイリッシュムーン
父マクフィ 富田
父マクフィについては以前考察しているのでこちら
ここでも書いたように自身はマイラーだったが、種牡馬としては母方の適性を引き出す種牡馬。
母ナスノシベリウスは現役時の全3勝のうち2勝が1800mによるもの。
このような父と母の組み合わせで本馬のここまでの2勝はいずれも芝1800m。
非常にわかりやすい配合結果が出ていると言える。
ということで今回の芝2000mはこなせるだろうが、ベストではない。という結論。
5枠10番エイシンチラー
父リアルインパクト M.デムーロ
リアルインパクトの父ディープインパクトは母父フレンチデピュティとの相性が良く、ダービー馬マカヒキはジャパンカップ勝ち馬のショウナンパンドラを出している。
ラウダシオンを出したように自身の適距離を伝えやすく、ディープ系のマイラー特化種牡馬の位置づけ。
母母エイシンサンサンがエリザベス女王杯(芝2200m)3着になったような牝系の血から本馬は芝1800mで連勝した。
そこからさらに1F距離延長となるのは歓迎材料ではないだろう。
6枠11番ファインルージュ
父キズナ 福永
母パオンルージュは現役時芝・ダート短距離で3勝。
父キズナは母方に重厚な欧州血脈を抱えるので、母にスピード血統を持って来ることが成功のための第一手。
これは、先日のNHKマイルCであわやの2着に好走したソングラインも同じ。
ということでこの馬も父配合の成功パターンにきっちり合致している。
また、この2頭から見るにキズナはサンデーのクロスが良さそう。
フェアリーS(G3)では道中後方でしっかり折り合い、3コーナーから動き出すと直線では一気に突き抜けるレースぶりで長く使える脚を披露しました。
そこで示した実力通り、前走の桜花賞でもきっちり3着に入着。
オークスの時に「オークスは「2400m」という字面程、距離を意識する必要はないものの過去の例から1200~1600m適性の馬にはさすがに長い印象です。
本馬の適性をそこに当てはめた場合はいらないという判断になるのですが、母母にあるダンスインザダークがなんとも不気味存在。出走馬の中で最も悩ましい一頭です。」と述べたのですが、結果11着はダンスインザダークを意識する必要はなかったということで良いかと。
だとすれば1600mがベストという結論にしたいのですが、キズナは2000mまでは持つということは覚えておいた方が良いかも。
6枠12番アビッグチア
父リオンディーズ 嶋田
父リオンディーズはエピファネイアと同じシーザリオ産駒でこちらは父がキングカメハメハ。
母シベリアクラシカは現役時20戦4勝(条件馬)、スプリンターだった。
父リオンディーズも朝日杯FS(芝1600m)を勝っているので、この組み合わせから本馬のような短距離馬が産まれるのは自然な流れで、1勝、2勝クラスを芝1400mで連勝したのは頷ける。
7枠13番ハギノピリナ
父キズナ 藤懸
母母にアネモネS(OP・芝1400m)を勝ったハギノスプレンダーがいる牝系。
半兄にダート中距離オープン馬のハギノアトラス(父クロフネ)がいる。
父キズナは母方に重厚な欧州血脈を抱えるので、母にスピード血統を持って来ることが成功のための第一手。
母父アドマイヤムーンは自身の現役時の競争成績に反して種牡馬としてはスピードを伝えやすいのでこの条件に合致している血と言える。
父キズナはディープインパクトにパワーを足したような種牡馬なので馬場が渋っても大丈夫。
オークス時に「中距離も既に経験済みですし、距離不安はなさそうですが相手レベルが一気に上がるここでの激走は「?」です。」と述べましたが、相手レベルが上がっても好走でき結果は3着。
オークス上位組としてここも格好はつけられそう。
7枠14番ホウオウイクセル
父ルーラーシップ 丸田
母メジロオードリーは現役時に2勝挙げているのだが、勝鞍はいずれもマイル。
母母には名牝メジロドーベルがいる血統表なので、クラシックを走るには申し分なし。
父×母「サンデー+ノーザンテースト」の組み合わせは2018年の桜花賞でアーモンドアイの3着と好走したリリーノーブルと同じ。
この配合をルーラーシップ産駒の「クラシックまでやって来る配合」としたい。
フェアリーS(芝1600m)2着から距離延長のフラワーC(芝1800m)で1着を獲って、桜花賞へ歩を進めたあたりはいかにも父の特徴といった感じです。
桜花賞の時に「再び距離短縮となるここは少しでも力が要る馬場になる方が歓迎でしょう。
ここから距離延長となり、輸送なく使えるオークスに色気を持っていそうな雰囲気はあります。」と述べたのですが、桜花賞を使ったことでオークスはパスせざるを得ない状況となってしまいました。
ということで距離延長はプラスですがその時以来の出走となるので、どこまで成長できているかでしょうね。
7枠15番スライリー
父オルフェーヴル 石川
母母ターキーは現役時、中長距離で3勝。
父オルフェーヴルに母父ディープインパクトという配合なのでサンデーサイレンスのクロスが3×3という濃さ。
ハマれば前走のようなアッと驚く好走もある反面、脆い一面が顔を覗かせることも多い。
オークスの時に、「このような血統背景なので距離延長は歓迎ですが、血統表の中でわんぱくオルフェーヴルと優等生ディープインパクトが近しいとこにおってこの2頭が仲良くできるとはわしは思えません。」と述べたようにオークスは良いとこなしでしたね。
オルフェーヴル産駒ということで中山は合いますが、他のオークス組にも言えるけど成長力がカギです。
8枠16番クリーンスイープ
父ドゥラメンテ 戸崎圭
母はG1を3勝(宝塚記念、エリザベス女王杯、秋華賞)した女傑スイープトウショウ。
父ドゥラメンテ×母父フォーティナイナー系の組み合わせは本馬の他にも青葉賞(G2)2着のキングストンボーイが出ており、相性が良さそうな配合。
このような配合なので距離は持ちそう。
8枠17番ホウオウラスカーズ
父ディープインパクト 横山和母父Shamardalはアメリカ産馬でイギリスのG1を4勝した馬(芝7F~2100m)。
血統系統はStorm Catのライン。
父ディープインパクトは周知の通り、Storm Cat肌馬との組み合わせでキズナを始め、数多の名馬を産みだした。
本馬は3歳未勝利を勝ち上がるのが遅く、クラシックには間に合わなかったが、十分成長を促せたことでここに来て連勝。秋華賞トライアルに間に合った。
この夏の上がり馬としてこのトライアルもクリアしてG1挑戦切符を手にすることができるか。楽しみだ。
8枠18番プレミアエンブレム
父ルーラーシップ 横山武
母メジャーエンブレムはNHKマイルCと阪神JFのGⅠ2勝馬。本馬はその初仔。
父ルーラーシップはサンデーサイレンスの血を持たないので母方にサンデーを持つ馬との交配が成功への基本線。
まだ1勝クラスを勝ったばかりだが、ここまで馬券圏外を外したことはなく安定して走るセールスポイントが初重賞の舞台でも通用するか。
また、血統的には中山に相性が良いノーザンテーストのクロスを持つことはプラス要因。
以上、出走馬全18頭の血統考察でした。
2021.9.10 post
紫苑ステークス
わし◎ホウオウラスカーズ
みっちゃん(仮)◎エクランドール
2021.9.11 post